三井化学はTDI類の値上げを実施する。改定幅は120円/KGで改定時期は5月2日納入分より。
原燃料コストの高騰と、製造設備の維持、安定供給体制コストの増加により、値上げをせざるを得ないと判断した。化学工業日報などが報じている。
日本国内のTDIメーカーは三井化学(大牟田工場/福岡県)と東ソー(南陽工場/山口県)の2社2工場。
公称生産能力は三井化学が12万トン、東ソーは2万5千トンの合計14万5千トンであるが、東ソーは既にTDI設備を2023年4月に生産を停止すると発表している。
三井化学大牟田工場のTDIプラントは1960年代までに蓄積した合成染料及び染料の中間体の製造を通じてニトロ化、アミノ化、塩素化などの有機合成技術などを活用し、デュポン社の技術導入を得て1963年に竣工した。その後1988年には副生塩酸から塩素を効率的に回収するMTクロルプラント(塩酸酸化法)を世界で初めて導入した。2001年には武田薬品工業とウレタン事業を統合。2002年には鹿島工場で6万トンを増産し、鹿島工場の生産能力を12万トン(公称11.7万トン)まで増産し、大牟田工場と合わせて年産24万トンと、アジア最大のメーカーであった。2008年にはリーマンショックの余波を受け、鹿島工場の稼働を休止、大牟田工場の稼働を50%まで下げるといった事態もあった。
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以下引用
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同社は今年10月から、鹿島工場内の年産11万7,000トン設備と大牟田工場内の同12万トン設備の稼働率をともに50%に抑えてきたが、-中略- 短期間での回復が期待できなくなってきたため鹿島のプラントを12月20日をもって完全に休止することにした。
大牟田の設備は引き続き50%に抑えていく。したがって、トータルの操業率は一気に25%まで低下することになる。同社始まっていらいの事態。同社では、取り敢えず来年3月末まで25%操業を継続する。その時点でなお需要の回復が見られない場合は、5月に予定している両工場の設備の定修・運休をともに前倒しする考え。 -中略- 輸出価格も下降の一途をたどり、直近のCFR価格はトン当たり2,500ドルとなっている。10月末に比較すると500ドル、9月末に対比すると1,500ドルの値下がりで、同社によると適正レベルを500ドル強下回っているという。
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2012年にはサウジ基礎産業公社(Saudi Basic Industries Corporation/SABIC)との間でTDI、MDIの製造技術ライセンス供与や事業提携の検討を行うことに合意していたが、プラントを建設するまでには至らなかった。
その後も市況の低迷を受け、三井化学は2016年に鹿島工場のTDIプラントを停止。2017年に工場を完全に閉鎖した。
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大牟田TDIプラントは1963年の稼働開始から59年を迎える歴史あるプラント。2020年5月に惜しまれつつも廃線となった三井化学専用線(旧三井三池炭鉱専用鉄道)も運行していた。三池炭鉱専用鉄道敷跡は、「明治日本の産業革命遺産」として2015(平成27)年に世界文化遺産に登録。鉄道ファン曰く、銀タキ(銀色のタンク貨車)は黒崎からの濃硝酸、黄タキ(黄色のタンク貨車)は延岡からの塩素とのこと。
ピンバック: 三井化学TDI類を値上げ。11月1日より+40円/KG以上 – PU Japan