ブリヂストン ウレタン事業撤退。’22年8月までに国内ファンドへ売却

株式会社ブリヂストンはウレタン事業を含む化成品ソリューション事業を国産投資法人のエンデバーユナイテッドに売却する。新会社を設立し、化成品ソリューション事業を新会社へ移管後、株式をエンデバーユナイテッドに譲渡する形。

中期事業計画(2021-2023)に基づく多角化事業再編の進捗について 化成品ソリューション事業の譲渡

同時に防振ゴム事業の売却も発表している。防振ゴム事業の2020年連結売上高は544億円。売却先は中国企業で安徽中鼎控股(集团)股份有限公司。


化成品ソリューション事業のグローバル連結売上は557億円(2020年)、従業員は4,037人。うち国内の従業員は1,513名(株式会社ブリヂストン、ブリヂストンケミテック株式会社、ブリヂストン化成品株式会社)
2020年度の決算資料によれば2020年度は多角化事業全体で5,101億円の売り上げがあり、調整後営業利益は97億円あったとされるが、加工品事業(化成品ソリューション事業に当たるとみられる)では167億円の営業赤字、スポーツ・サイクル事業では1億円の営業赤字であった。事業全体として米国事業が多角化事業を支えていたが、実態は屋根材を手掛けるファイアストン・ビルディング・プロダクツ・カンパニー(以下FSBP/2020年度売上18億ドル、EBITDA/2.7億ドル)が多角化事業全体を支えていた形となる。

2020年決算説明資料より 

しかし、不自然なことに2021年3月には稼ぎ頭のFSBP社を売却し、2998億円の売却益を計上している。この売却により多角化事業セグメントは大きな収益減を失った。2021年度第3四半期までの実績では、この影響もあり、多角化事業全体で54億円の営業赤字となっている。

2021年3Q決算説明資料より

多角化事業の売上と営業利益を見ると、2012-2017年は300-400億前後の営業利益があったが、2018年以降は大苦戦。今期(2021年12月期)の通期の営業赤字は免れないとみられる。

2010年2011年2012年2013年2014年2015年2016年2017年2018年2019年2020年2021年3Q
売上4,9465,0054,9905,4626,0186,3505,8576,2786,1875,8835,1012,635
営業利益1335825538542144534831889197-54

同社は2018年に掲げた中期経営計画に基づき、不採算事業及びの整理を進めている。
多角化事業については「事業拡大」との方針があったが、『各事業の営業利益目標10%』に達する見込みが無くなったものとみられる。化成品事業の売却で370億円の売却損が発生する見込み。

不自然なファイアストンの屋根材事業売却
前述通り、FSBP売却に於いて2998億円の売却益(所得税費用695億円を含む)があり、3000億円超のキャッシュフローがあったとみられるが、残念ながら多角化事業の再生には使われず、むしろ多角化事業存続にとどめを刺した形。化成品事業と防振ゴム事業の売却によりそれぞれ370億円と820億円の売却損を見込んでいる。

2021年3Q決算資料より:

株主還元に大盤振る舞い

ブリヂストンは配当性向40%を目安に配当を行うとしている。

配当金の総額は下記通り。

2017年 1,137.7億円
2018年 1,202.8億円
2019年 1,138.8億円
2020年 774.5億円
2021年(予定)1,197億円

また、これとは別に2017年位1,500億円と2019年に2,000億円の自社株買いを行っており、2017年から2021年までの株主還元額は8,950.8億円。
FSBPの税引き後売却益の2,300億円は、ほぼ2年分の配当に消えるのであった。

ブリヂストンのレーティングは下記通り

12/10 QUICKレーティング +0.18
12/8 野村 Neutral継続
12/7 JPモルガン  Neutral継続

最近の事業の選択と集中の発表
12/10 化成品事業と防振ゴム事業の売却を発表。売却損1190億円見込み。
12/7 中国ラジアルタイヤ事業生産拠点集約。恵州工場を閉め、瀋陽に集約と発表。
12/6 タイのテニスボール事業会社YONEXに売却を発表。
11/26 ブリヂストン化成品の高機能化成品製造拠点を3か所閉鎖を発表。9から6拠点に。
11/1 コンベヤベルト事業撤退を発表
10/8 ブリヂストンケミテック 上尾工場閉鎖を発表。



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ブリヂストン ウレタン事業撤退。’22年8月までに国内ファンドへ売却」への1件のフィードバック

  1. yatarou.by

    ブリヂストンと言えば世界一のタイヤメーカーで有ったが化成品ソリューション事業部(特にウレタン事業には長い歴史を持つ).防振ゴム部門を売却となって来ると、この先に不安を感じるが本当に大丈夫なのか?。

    いいね: 1人

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