2021/3/23 国内PO(Propylene Oxide/プロピレンオキサイド/酸化プロピレン)メーカー、PPG/Polyol(一般的にポリプロピレングリコール/ポリエーテルポリオール類の総称)メーカー各社が値上げを発表している。
従前よりPOメーカーはナフサ連動でPO価格を、PPG/Polyolメーカーもナフサ連動「2円/KG×ナフサ変動÷1,000円/KL」で、自動車部品メーカー(Tr-2, Tr-3)もナフサ連動で成形品を上流部品メーカー(Tr-1, Tr-2)へ、といった形で上から下まで一貫してナフサ連動による価格改定が『普通』になっていた日本市場であるが、ここに来て各階層で無理が生じてきており、「ナフサ分以外」の改定を打ち出すメーカーも散見されてきた。
新聞等での各社値上げ発表は下記通り。
1/26発表 ダウ・ケミカル日本 プロピレン系グリコールエーテル溶剤値上げ 2/8より+30円/KG
3/3発表 三井化学SKCポリウレタン PPG/POPの値上げ 3/15出荷分より+30円/KG以上
3/8発表 住友化学 PO値上げ 4/1出荷分より「ナフサ分以外」で+30円/KG
3/22発表 AGC PO値上げ 4/1出荷分より+40/KG
3/23発表 ADEKA PG/DPG/TPG/PPG値上げ 4/1出荷分より+70-90円/KG
3/23発表 三洋化成 PPG/POP値上げ 4/1出荷分より「ナフサ分以外」で+30円/KG以上
3/29発表 AGC PPG/POP/プレポリマーの値上げ 4/21出荷分より+40円/KG
3/30発表 三井化学SKCポリウレタン PPG/POPの値上げ 4/1出荷分より「ナフサ分以外」で+30円/KG以上
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国内のPOのバランス
国内のPOメーカーは住友化学、AGC、トクヤマの3社で合計39万9千トンの生産能力。経産省統計によれば2019年の生産数量は39万1,414トンで、定修等を鑑みると実質的な稼働率は100%を超えていたとみられる。輸入は10KG、輸出はゼロであった。2020年の生産実績は3社で346,964トン。輸入はシンガポールから約450トン、輸出は中国向けに3,500トンが確認された。2015年に日本オキシラン(住友化学60%、ライオンデルバセル40%出資、SM41.2万トン、PO18.1万トン、PG10万トンの能力)が閉鎖後、まとまった数量の輸出は見当たらなかったが、2016年以来の輸出となった。
住友化学は千葉工場で年産20万トンの生産能力。自社技術のキュメン法(単産法)にてPOを製造。
AGC、トクヤマはそれぞれ苛性ソーダを得るための電解設備より得られる塩素の有効利用の一つとして塩素法でPOを製造する。AGCは年産11万トン、トクヤマは8.9万トンの能力とされる。
メーカー | 生産能力 トン/年 | 製法 |
AGC | 110,000 | 塩素法 |
住友化学 | 200,000 | キュメン法 |
トクヤマ | 89,000 | 塩素法 |
合計 | 399,000 |

推定国内需要は生産数量に輸入数量を足し、輸出数量を引いたもの。在庫の増減は考慮していない。後述取り扱いの難しさにより市中在庫はほぼ存在しないとみなした。また、メーカー・需要家在庫についても設備に限りあり、誤差の範囲と考える。
国内のPO需要は36-40万トン程度を推移しているが、生産能力はフル稼働で39.9万トン。良く言えばウェルバランスであるが、天災やトラブル、長めの定修等が必要な際などには一気にタイトになる可能性を秘めている。
POは融点マイナス104℃、沸点33.9℃、引火点-37℃、常温で爆発的に引火する。取り扱いに細心の注意が必要な化学品。消防法上の特殊引火物である他、高圧ガス保安法で可燃性ガス、毒性ガスに指定される。
国内輸送はもとより海上輸送についても輸送や保管等容易ではなく、輸入、輸出、国内輸送共に十二分な準備・計画が必要な化学品であり、スポット調達・輸送等は容易ではない。
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